黄昏泣き
闇雲川に架かる橋の欄干に寄り掛かりながら、葛馬は一人ぼんやりと沈みゆく夕日を眺めた。
空を赤く染めながら、もうじき自分の視界から消えてしまう太陽に、葛馬は言いようのない寂しさを覚えた。
別に、このまま太陽が沈みきってしまい、空には月と星となってしまったところで、本当にこの世から太陽が消えてしまう訳ではない。
太陽は、葛馬がこの世に生まれる何十億年も前から、この空の遥か向こうに太陽系の中心としてデーンと存在している。
視界から消えるのは、葛馬の居るこの地球が、太陽の回りを公転しながら自らも回転しているからだ。
葛馬の目に今夕日と映る太陽は、地球上のどこかでは真昼の太陽として地上を燦々と照らしているし、また他のどこかでは暁の天にその姿を現し始めている最中である。
分かっていても、胸にこみ上げてくる切なさに、葛馬は涙を押さえる事が出来なかった。
気がつくと、葛馬はあるマンションのベランダへと降り立っていた。
部屋の主は、葛馬のよく知る人物だ。
夕日によく似た髪と瞳の色を持つ、その人の名前はスピット・ファイア。
葛馬はガラス越しに室内を覗き込んだ。
突然の訪問。スピット・ファイアのスケジュールを把握してでの行動ではない。
だから、スピット・ファイアと逢える可能性ははっきり言って低い状況だし、もしかしたら自分の姿を見た他の人間に不審者がいると通報されてしまうかもしれない。
だが、今の葛馬にとって、そんなのは瑣末な事であった。
逢いたい。
その思いが、葛馬を突き動かしていた。
純白のグランドピアノの前に、スピット・ファイアの姿があった。
葛馬は、二人を隔てるガラスを割れんばかりの勢いでドンドンと叩いた。
振り向いたスピット・ファイアが、慌てて葛馬の方へと駆け寄ってくる。
「どうしたんだい? カズ君」
ガラス戸を開けながらそう尋ねるスピット・ファイアに、葛馬は安堵の涙が出そうになるのをギリギリで我慢した。
「夕日見てたらさ、何かアンタに逢いたくなった」
それから、スピット・ファイアに向かってニカッと笑ってみせた。
end
「子犬と王様」のていおーさまより頂きました!
バトンの質問にこんな素敵なSSで回答して頂きましたよvv
凄く綺麗で深い内容に感動です。
そして、やっぱりスピのコトが大好きなカズくんにトキメキました!
ていおーさま、素敵なSSありがとうございました!
闇雲川に架かる橋の欄干に寄り掛かりながら、葛馬は一人ぼんやりと沈みゆく夕日を眺めた。
空を赤く染めながら、もうじき自分の視界から消えてしまう太陽に、葛馬は言いようのない寂しさを覚えた。
別に、このまま太陽が沈みきってしまい、空には月と星となってしまったところで、本当にこの世から太陽が消えてしまう訳ではない。
太陽は、葛馬がこの世に生まれる何十億年も前から、この空の遥か向こうに太陽系の中心としてデーンと存在している。
視界から消えるのは、葛馬の居るこの地球が、太陽の回りを公転しながら自らも回転しているからだ。
葛馬の目に今夕日と映る太陽は、地球上のどこかでは真昼の太陽として地上を燦々と照らしているし、また他のどこかでは暁の天にその姿を現し始めている最中である。
分かっていても、胸にこみ上げてくる切なさに、葛馬は涙を押さえる事が出来なかった。
気がつくと、葛馬はあるマンションのベランダへと降り立っていた。
部屋の主は、葛馬のよく知る人物だ。
夕日によく似た髪と瞳の色を持つ、その人の名前はスピット・ファイア。
葛馬はガラス越しに室内を覗き込んだ。
突然の訪問。スピット・ファイアのスケジュールを把握してでの行動ではない。
だから、スピット・ファイアと逢える可能性ははっきり言って低い状況だし、もしかしたら自分の姿を見た他の人間に不審者がいると通報されてしまうかもしれない。
だが、今の葛馬にとって、そんなのは瑣末な事であった。
逢いたい。
その思いが、葛馬を突き動かしていた。
純白のグランドピアノの前に、スピット・ファイアの姿があった。
葛馬は、二人を隔てるガラスを割れんばかりの勢いでドンドンと叩いた。
振り向いたスピット・ファイアが、慌てて葛馬の方へと駆け寄ってくる。
「どうしたんだい? カズ君」
ガラス戸を開けながらそう尋ねるスピット・ファイアに、葛馬は安堵の涙が出そうになるのをギリギリで我慢した。
「夕日見てたらさ、何かアンタに逢いたくなった」
それから、スピット・ファイアに向かってニカッと笑ってみせた。
end
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ていおーさま、素敵なSSありがとうございました!
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